『V字回復の経営』

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V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫) V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)
三枝 匡

日本経済新聞社 2006-04

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三枝匡氏の三部作はあまりにも有名である。その三部作とは、『戦略プロフェッショナル』、『経営パワーの危機』、そして今回紹介する『V字回復の経営』である。
三部作の発行年月は古いが、いまだに読み続けられている。そして、なぜか、三部作とも、拙著『サラリーマンの本質』と一緒に買われることが多いのである。

 

この本は、ストーリー仕立てのビジネス書である。しかも著者が実際に携わり、V字回復を成し遂げた東証一部上場の産業機械メーカーの実話を基にしているところに大きな特徴がある。
ストーリー仕立てのビジネス書は、まだまだ日本では少ないが、以前に紹介した稲田将人氏の『戦略参謀―――経営プロフェッショナルの教科書』が有名である。

 

私は、この本を読む前に藤本篤志氏の『そんな営業部ではダメになる (日経プレミアシリーズ) 』を読んでいた。
同書では、「なぜ営業部は変われないのか?」という問題を提起し、営業改革の失敗と成功の法則を示しているが、営業改革は、けっして小手先の改革では進まないことを読者は痛いほど知ったはずだ。

 

しかし、この『V字回復の経営』は、経営そのもの回復なのである。しかも、赤字垂れ流し体質からの脱却なのである。失敗したならば生き残ることができない課題への挑戦なのである。

 

本書では、アスター事業部、そして子会社アスター工販の経営立て直しに、東亜テックの再建に成功し、香川社長から、改革の使命を受けた黒岩莞太、そして、従来よりアスター工販にいた川端祐二ら、そしてコンサルタントである五十嵐による懸命な努力と軌跡を描いている。

 

かれらが沈滞企業で何を発見したのか、そして、改革を成功させたポイントはなにか(「沈滞事業の症状50」「改革を成功へ導くための要諦50」参照)が本書の内容である。

 

「不振事業の症状50」から

症状14 会議の出席者がやたらと多い。

症状19 社内では顧客の視点や競合の話がなく、内向きの話ばかり。

症状20 「負け戦」をしているという自意識がない。

症状21 個人として「赤字の痛み」を感じていない。責任を皆で薄めあっている。

症状22 商品別の全体戦略が「開発→生産→営業→顧客」の一気通貫で行われていない。

症状23 商品別損益がボトムラインで語られていない。

症状24 原価計算がたくさんの商品を丸めた形で行われている。

症状30 あれもこれもと開発テーマが多すぎる。

症状36 営業活動のエネルギー配分が管理されていない。

症状37 「絞り」「セグメンテーション」の考え方が足りない。

症状38 「戦略」が個人レベルまで降りておらず、毎日の「活動管理」のシステムが甘い。

症状40 代理症候群が広まり、組織の各レベルにミニ大将がはびこっている。

症状43 組織に感動がない。表情がない。真実を語ることがタブーになっている。

 

「改革を成功へ導くための要諦50」から

要諦 8 解決策を探し出すには、社員が共有すべきコンセプト・理論・ツールをトップが示さなければならない。

要諦 9 「創って、作って、売る」をスピードよく回すことが顧客満足の本質。

要諦15 スピードに関する組織カルチャーを最初にリセットしないと勝利の方程式は動き出さない。

要諦21 計画を組むものと、それを実行する者は同じでなければならない。

要諦27 営業マンの頭の中をいつもスッキリさせておく。 彼らの心理的集中を確保することに留意する。

要諦38 一般に経営改革では、「突撃しない古参兵」よりも、今は能力不足だが潜在性の高い「元気者」を投入すべきである。

要諦40 「危ない橋」の中央に迫ってくる不安には、「打つべき手はすべて打った」と腹をくくって自分を支えるしかない。

要諦44 社員の「頑張り」は、「仕組みによる強さ」のストーリーが明確な場合に生まれてくる。

要諦49 沈滞企業では競争の悔しさや痛みを感じる機会が少ない。元気な組織は感情の起伏が激しい。

 

どうだろうか? 私の会社も含め、きっとみなさんの会社にも、上記のような「症状」があるのではないだろうか?
私がこの本を読んで特に感じいった箇所に下線を引いた。
その中でも、「創って(開発)、作って(生産)、売る(営業)」をスピードよく回すことは、実際のビジネスの世界では極めて重要だと思うのである。
本書では、この「創って、作って、売る」を、商品別にビジネスユニットにすることに解決している。

 

また、本書の「計画を組むものと、それを実行する者は同じでなければならない」は、みなさんも、きっと思うところがあるだろう。
それは、日本企業の多くは、計画は企画部門、実際にやるのは営業部門というように分離化されているからである。
その結果、営業等の現場では、会社戦略がよくわからないまま、とにかく日々、営業活動などを行っている人が非常に多いと思う。
したがって、前記「症状」にあるように、「負け戦」をしているという自覚もないし、個人とした「赤字の痛み」など感じることがないのである。
本書では、回復プロジェクトに従事した人間が、ビジネスユニットの社長になって陣頭指揮をしたのである。

 

そして、以上のことを考えると、私は、不振企業ないし沈滞企業からの脱出は、著者の言葉を使えば、「そこにいる社員が今まで以上に有効な働き方をすること」にほかならないと思うのである。
逆に言うと、一人一人が有効な働き方をしていないから、不振企業になるだと思うのである。
そして、一人一人が有効な働き方をするためには、一人一人まで、戦略が浸透していなければならないのだと思う。
それが「改革」だと思うのである。

 

 

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