『シンプルに考える』

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シンプルに考える シンプルに考える
森川亮

ダイヤモンド社 2015-05-29

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前LINE株式会社CEO森川亮氏の本である。
タイトルのイメージとは異なり、衝撃的な内容の本である。
この本には私たちがいままで教えらてきたこととはまったく異なるビジネスの原則が書かれている。

 

見出しをいくつか見てみよう。

 

2  ビジネスのシンプルな本質とは?
「求める人」と「与える人」のエコシステム

 

3  ビジネスは「戦い」ではない
ライバルではなく、ユーザーだけを見る

 

17 「成功」は捨て続ける
自分の市場価値を高める唯一の方法

 

26 「経営理念」は文書にしない
形骸化した理念が会社を壊す

 

27 「ビジョン」はいらない
未来を予測するより、目の前のことに集中する

 

28 シンプルでなければ「戦略」ではない
わかりにくいメッセージは、現場を混乱させる

 

29 守ると攻められない
覚悟をもって「過去の成功」を捨てる

 

30 「計画」はいらない
計画があるから、変化に弱くなる

 

36 「差別化」は狙わない
ユーザーは「違い」ではなく、「価値」を求めている

 

37 「イノベーション」は目指さない
目の前のニーズに、愚直に応え続ける

 

40 ユーザーは「答え」を教えてくれない

 

どうだろうか?
私たちが教わり続けていたこととはまったく逆のことが書かれていないだろうか?
特に、中堅ビジネスマンにとっては、「『経営理念』は文書にしない」「『ビジョン」はいらない」「『計画』はいらない」「『差別化』は狙わない」あたりは、「えっ? 全然、今まで読んだ本とは違うではないか」と思うはずである。
しかし、一方で見出しの横書きを見てみると、「そういうことなのか……」とも思えてくるのである。

 

私も、慌てて、教科書がわりにしている『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』(ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポーター 日経BP出版センター)、『経営戦略の論理 〈第4版〉―ダイナミック適合と不均衡ダイナミズム 』(伊丹敬之 日本経済新聞出版社)を見てみた。
『ビジョナリー・カンパニー』の冒頭で著者は次のように言っている。
「傑出した企業に、時代を超えて、一貫してみられる経営理念を見つけようとした」
そして、『経営戦略の論理』の目次も、見ていただきたい。
……
第3章 競争優位をつくるー戦略の競争適合(1)
第4章 反撃を見越す、敵にしないー戦略の競争適合(2)
第5章 ビジネスシステムで差別化するー戦略のビジネスシステム適合
第6章 技術を活かし、技術を動かす―戦略の技術適合
……

 

おわかりだろうか? 私たちは、今まで「競争戦略」「差別化戦略」を教えられてきているのである。
顧客ニーズをつかみとった上で、企業が生き残るための「競争戦略」「差別化戦略」を教わってきているのである。
それゆえに、こうした本を読むと、企業の成功例やケーススタディが山ほど載っている。
そして、経営理念⇒ビジョン⇒戦略という図式も頭に擦り込まれている。

 

しかし、『シンプルに考える』を読んで、今まで当たり前のように受け容れてきたものが、壊れだした。
それは、いかにも顧客ニーズの具現化は、「差別化」のように思っていたが、よくよく考えてみると、「差別化」と「顧客ニーズ」とはイコールではないことに気づいたからである。
顧客はあくまでも「価値」を求めているのである。
ここは混同してはいけないところだと思えてきたのである。
こう考えると、本書の「差別化」は狙わない  ユーザーは「違い」ではなく、「価値」を求めている という見出しが一際光って見えてきた。

 

本書は、ビジネスの本質は、「ユーザーが本当に求めているものを提供し続けること」と言っている。
また、ビジネスの本質は、「求める人」と「与える人」のエコシステム(生態系)と言っている。
たったそれだけであるから、シンプルなのである。そして、「シンプルに考える」と、それ以外のものはみな余計なものとなる。
こう考えると、この本のタイトルの意味がわかってくる。

 

さて、私は、この本を読んで深く考えさせられた。
それは、「経営原則」などは、ひとたび文字になり本となると、それがあたかも動かぬ事実のようになる。
動かぬ事実のように思えるから、またそこに成功例やケーススタディなどが上塗りされていく。
きっと、そうではないのだ。ビジネスの考え方、ビジネスでの生き残り方は、時代と共に移り変わるものなのだ。それをこの本を読んで痛感した。

 

そして、考えてみれば、本書が言うように、今の時代は、経営理念やビジョン、計画などにこだわっている時代ではないかもしれない。
それらの理念やビジョン、計画がたえず「顧客」に向いているならまだしも、往々にして、その策定の必要性のみが企業内で固執されることがある。
また、それ以上に、環境が激変している。
そうすると、そんなことにこだわっているよりは、ただ一点ー顧客にとって「価値」があるものを作り続けるーこの考え方が、今の時代には正しいように思えてくるのである。
みなさんは、どう思われるだろうか?

 

(本書を、Amazon kindle版で読んでみた)

 

 

 

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