『カイジ「命より重い!」お金の話』

カイジ「命より重い! 」お金の話

木暮太一

サンマーク出版 2013-04-22

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ギャンブルを題材にした漫画『カイジ』シリーズを基にしたお金の話である。
主人公カイジが体験したお金にまつわる教訓を経済ジャーナリスト木暮太一氏が解説している。
これがとても、いいのである! 下手なビジネスなど、とても適わない内容を持っている。そして、問題の核心を突いているのである。

 

なぜこの本がいいのだろうか?
それは、私たちは、薄々感じながらも本当のことを理解していなかったり、敢えて踏み込むことを避けていることがある。
この本は、この「本当のところ」と「敢えて踏み込まなければならないこと」2つとも示しているから、胸を抉られるような気持ちになるのではないだろうか。
そして、そんな本は滅多にお目にかかれないからである。

 

この本に書かれていることは重い。
その中でいくつか本質的な内容を紹介したい。
冒頭、著者は、現在出版されているマネー本の中身は「稼ぐ」と「節約する(貯める)」の2種類のテーマしかないと言っている。
すなわち、「お金の守り方」「お金の使い方」について語られることがなく、また多くの日本人は、興味を持ってこなかった。
それゆえ不幸になる人がいると指摘している。
まさにその通りだと思う。
今は、出版業界では、「これからマネー本は売れる!」と様々な企画を立てている。
「いったい今まで何をしてきたのか」という感情を覚えると共に、果たしてこの本のように本質を突くものが出来上がるだろうかと疑念を持つのである。

 

「宝くじの当選者はなぜ不幸になるのか」(P72~)は不幸になる人の過程を鋭く記述している。
その原点は、経済学の「限界効用逓減の法則」であると言っている。
すなわち、「同じ満足感を得るためには、もっとお金が必要」(P76~)「生活水準を下げるのは耐えられない!」(P84~)であるからだとしている。

 

次の記述に着目する必要がある。
「”限界効用逓減の法則”を別の視点からみると、”その生活レベルや、そのモノを持っている状態に慣れてしまい、当たり前と思う”ということです。つまり、自分の中で”当たり前”の基準が変わってしまったのです。この”当たり前の基準”を、経済学では”参照基準点”と呼びます」(P84)

 

この”参照基準点”という言葉は、ぜひ自覚しなければならない言葉だと思う。

 

次の記述も参考になる。
「今からどうがんばっても、返ってこない費用であれば、その費用がいくらであっても、今後の判断の材料にしない、というのが経済学の鉄則です。つまり、払ったことを無視して、その時点でベストだと思うことをするのが”正解”なのです」(P193~)
ここも、我々はわかったつもりでもできないところである。ギャンブルや投資で損を出せば出すほど、取り返そうと思うのではないだろうか。
ここに破綻の大きな要因がある。

 

「人生では、勝負を続けられることが一番大事」(P204~)
そのためには、「致命的に負けない」ということである。
このことも、まさしく真実だと思う。

 

この本の最後が素晴らしい。
「いつまでも働き続けられる!」という自信をつける(P231~)
ここで”働きつづける能力”について、こう言っている。
「『仮に、今の会社がなくなっても、その産業自体がなくなっても構わない。自分は何か別のことをして生きていけるから』という強い自信を持っている人は、将来に不安を感じません。『専門性があって、今はたくさん稼げているけど、将来どうなるかわからない』と感じている人より、圧倒的に強いのです。」(P233~)

 

このエンディングも真実のように思うのである。
サラリーマンなど今、一生懸命働いている人でも必ず将来に対して不安を持っている。
「将来のためにお金を貯めておこう」「強い専門知識を身に付けておこう」「資格を取っておこう」と考えている。
あるいは、将来の不安から、少しでも自分の中身を改善しておこう、自分を強くしておこうという気持ちからビジネス書を買っているのかもしれない。
しかし、こう考えると切りがなくなってしまうのである。
それは、どこまですれば不安を払拭できるかがわからないからである。
仮に3,000万の貯金をしても、5,000万の貯金をしても、この不安は払拭できないのではないかと考える。
それよりも、表現は難しいが、この本のように、「どんなことがあっても、オレは、食っていけるさ」という自信の方が、はるかに不安を払拭できるように思えてならないのである。
みなさんは、どう思うだろうか?

 

本を読み終えて、著者の経歴を見てみた。
私が「なるほど」と思ったのは、「学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学時代に自主制作した経済本が学内で爆発的にヒット、現場も経済学部の必読書としてロングセラーに」との記載である。
なるほどこの本は、難しいことをわかりやすくし、しかも本質を突いている。
このことだなと思った次第である。

 

最後にお話しいたいのは、今の時代は、誰でも、高い買い物をしたり、高いレストランに行ったり、贅沢な旅行に行ったりすることが可能だということだ。
それは、言うまでもなくクレジット社会だからだ。これがもし、自分の手持ち現金の中でしかやりくりできないとするならば、こうした選択は随分と減るはずである。
この本は、「借金とは、将来の自分の収入からの前借りに他ならない」(P185)と述べている。
つまり、どんなに贅沢をしようが、結局は自分の手元現金(収入)から払わなければならないということである。
このことが、忘れがちではあるが、問題の原点であるような気がしてならない。

 

 

 

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2014年10月11日