『イシューからはじめよ』

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イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」 イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
安宅和人

英治出版 2010-11-24

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この本も『ロジカル・シンキング』と並んで有名な本である。
著者は『ロジカル・シンキング』の著者と同様にマッキンゼー出身である。
また著者の経歴はちょっと変わっていて東京大学大学院生物化学専攻で修士号を取得後、マッキンゼーに入社し、イェール大学脳神経科学プログラムに入学し、学位(Ph.D)を取得したのち、またマッキンゼーに復帰した経歴を持つ。その後、ヤフーの執行役員チーフストラテジーオフィサーとなっている。
この経歴が、この本を特徴づけている。
そして、この本は言ってみれば、『ロジカル・シンキング』同様、教科書に近い。すなわち、書評に適さない本だと言える。
さらに内容は非常に高度である。
おそらく、コンサルの経験者か、あるいは企業の中で特定の課題を追求している人でないと、一度読んだきりでは本書の論点を理解するのは難しいと思われる。

 

もちろん、私にとっても完全には理解するのは難しい本だが、しかし、私にはこうした場合、とっておきの方法がある。
それは、まず、この本は何のために書かれた本かを理解するところから始める方法である。
まず本の袖で、「知的生産の全体感」と言っていること、そして、「はじめに」の冒頭の見出しが「優れた知的生産に共通すること」となっていることに着目する必要がある。
そう、この本は、「知的生産」を高める本なのである。
この「知的生産」という言葉から、「ああ、なるほど!」と頷く人はきっと多くいると思う。
それは、他の外資系コンサルタントもやはり「知的生産」という言葉を使っているからだ。
そして、このHPでも紹介した勝間和代氏の『効率が10倍アップする 新・知的生産術』という本を思い起こした人もいるだろう。そう、この本のタイトルをよく見てもらいたい。
つまり、勝間氏の本は、知的生産を効率よく高めようと言っている本だと解することができるのである。

 

さて、こうした観点から、もう一度、この本のタイトルを見直してみよう。
「ははあ、なるほどだ」と頷く人はきっと多くいると思う。
すなわち、この本は「イシュー」を見極めることにより、「知的生産」を高めようとしている本なのである。
そして、この本では、「何が本当のカギ」なのかを「イシュー」と言っている。
「何に答えを出すべきなのか」が絶対に必要だと言っているのだ。
(補足だが、issueは、直訳すると争点、問題(点)という意味である。)
しかし、この「このイシュー」を見極めるは難しいと、この本は言っているのである。それゆえその説明に丸々本1冊を要したのである。
つまり、この本は、生産性をいかに上げるかを目的とし、それには、「イシュー」の見極めが必要と言っているのである。

 

上記の目的がこの本にはハッキリと出ている。
「この本で言うところの『生産性』の定義は簡単で、『どれだけのインプット(投下した労力と時間)で、どれだけのアウトプット(成果)を生み出せたか』ということだ。」(P22)
そして、数式を示している。
生産性=アウトプット/インプット=成果/投下した労力・時間
どうだろう? すなわち、この本は、視点を変えれば、いかにして「アウトプット」を高めていくかを目的とした本なのである。。そのために「イシュー」の見極めが必要だと言っているのである。

 

そして、この本の各章ごとの内容は下記のとおりである。(P34に図解で示されている)

 

第1章 イシュードリブン  今本当に答えを出すべき問題=「イシュー」を見極める

 

第2章 仮説ドリブン①   イシューを解けるところまで小さく砕き、それに基づいてストーリーの流れを整理する

 

第3章 仮説ドリブン②   ストーリーを検証するために必要なアウトプットのイメージを描き、分析を設計する

 

第4章 アウトプット    ストーリーの骨格を踏まえつつ、段取りよく検証する
ドリブン

第5章 メッセージドリブン 論拠と構造を磨きつつ、報告書や論文をまとめる

 

どうだろうか? この本の内容をイメージできたのではないだろうか。
そしてこの本は、「イシュー」を見極める方法として「仮説を立てる」ことが極めて大事と言っている。
「イシューの見極めについては (略) 強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが肝心だ」(P48)

 

「仮説を立てない限り、自分がどのレベルのことを議論し、答えを出そうとしているのかが明確にならず、それが明確になっていないことにすら気づかない。仮説を立てて、はじめて本当に必要な情報や必要な分析がわかる」(P49)

 

そして、ぜひ、次の記述に着目してもらいたい。
「イシューを分解するときには、『ダブリもモレもなく』砕くこと、そして『本質的に意味のある固まりで』砕くことが大切だ」(P108)

 

ストーリーラインの2つの型 から
「論理的に検証するストーリーをつくるとき、そこには2つの型がある。ひとつが、『WHYの並び立て』、もうひとつが、『空・雨・傘』と呼ばれるものだ。このどちらかの型をストーリーの背骨とすることで、ストーリーラインは比較的簡単にできる」(P133)

 

おわかりなっただろうか? ダブリもモレもなくは、『ロジカル・シンキング』でさかんに出てきた「MECE」である。そして、「WHYの並び立て」「空・雨・傘」も外資系コンサルタントの本でさかんに出てくる表現である。
私も、この本を読んで、外資系コンサルタントが言おうとしていることが、体系的に理解できそうな気になったのである。
確かに、外資系コンサルタントの本で、いきなり、これらの言葉が出てきても、つながりというものがよくわからなかったのである。
この本を読めば、それが、多少わかったような気になるはずである。

 

最後に、この本はこう言っている。
「この国では論理思考や問題解決において、新しいツールの紹介のようなものばかりが行われ、本質的な知的生産についての議論が足りないように思う。この本が共通の議論のベースと実践の手がかりとなればと願っている」(P240)

 

つまり、これが著者の目的ということになる。そして、最後にやはり「知的生産」という言葉が出てきたではないか。
この本の内容は高度だが、我々の「読み」はあたっていたということになる。

 

 

 

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