『他人を攻撃せずにはいられない人』

他人を攻撃せずにはいられない人 (PHP新書)

片田珠美

PHP研究所 2013-11-15

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この本はビジネスマンのみなさんに、ぜひ読んでもらいたいと思っている。
この本は、精神科医である著者が、他人を攻撃する人の心理メカニズムとその防御方法を書いている。
著者によれば、攻撃欲の根底に潜んでいるのは、たいてい支配欲だという。
そして、私がなぜみなさんにこの本をおすすめしたいかと言えば、他人を攻撃する人の心理メカニズムがわからなければ、決して防御できないからである。
そして、おそらくこの本を読まなければ、自分が攻撃されていることすらもわからないということがあると思うからである。

 

この本は、もちろん、ビジネスの世界だけの話ではない。友人との関係、家庭内で起きていることなど、広く人と人との関係について書いている。
しかし、驚くほど、ビジネスの現場にいる人で、この攻撃する人に当てはまる人がいる。
そして、多くは、こうした攻撃する人が自分を攻撃していることがわからないことが多い。仮になにか変だなと考えていた場合でも、その人の意図というものがわからない。
そんなこともあり、みなさんに、ビジネスの現場でいそうな攻撃する人の特徴と行動を、著者の記述から抜粋してみたい。
「やはり……」と思う人が多いのではないだろうか。

 

・この人たちの特徴は、「相手をけなして無価値化すること」である。

 

「自分が誰よりもよく知っていて、誰よりもうまくやれるということを誇示したいかのようである」

 

本書では、医師としての著者自身の経験も語っている。

 

「私が以前勤務していた病院で、他の科に新しい部長として着任した医師が、このタイプだった。
前任者のやり方を全て否定して、自分が以前勤務していた病院のやり方をスタッフに押しつけようとした。とても複雑でわかりにくく、ただ、自分のほうが前の部長よりも能力があり、自分が勤めていた病院のほうが優れていることを認めさせるためにやっているようにしか見えなかった」

 

・そして、「全てを支配しようとする」人である。

 

「うまく機能していたシステムをわざわざ壊して、あえて自分のやり方を導入し、問題が起こっても、それを決して変えようとしないのは、全てを支配していたいという欲望に突き動かされているからである」

 

「こういう人にとって何よりも大事なのは、自分が全てを支配できるかどうかだからである」

 

「忘れてはならないのは、こういう人は、自分の正しさを確信しているということだ」

 

・「他人の価値を無視」する人である。

 

「攻撃欲の強い人は、自分以外の人間には何の価値もないと思っている場合が多く、それを相手に思い知らせるために何でもする。やる気をなくさせたり、へこませたりして、価値があるのは自分のほうだということを見せつけようとするわけである。
しかも、自分とは異なる意見を決して受け入れようとはせず、そういうことを主張する相手に対しては、非常に敵対的になる。これは、自分の考えこそが正しく、価値があると思い込んでいるからである」

 

・「他人を無価値化して、自分の価値を保つ」人である。

 

「………話を聞かないとか、関心のないふうを装うといったやり方で相手の存在を一切無視することによって、存在価値を決して認めようとしない場合もある」

 

「話に耳を傾けようとせず、さげすむようなまなざしを向けて、相手の要求も欲求も一切考慮しないという態度を示すこともある。
………目の前の相手が属しているジャンルの人を批判したり、非難したりするのも、よく用いられる手法である」

 

・「自分とは異なる価値観を受け入れられない」人である。

 

「自分自身の考え方や価値観を唯一最良の基準として他人に押しつけたり、自分の知識や教養をひけらかしてそれを身につけるのが当然という態度で接したりするのも、攻撃の強い人がしばしば用いる手法である」

 

「いわば、自分が一番大事で、自分が誰よりも優れており、自分が常に正しいと信じ込んでいるような『自己愛の魂』である」

 

「ターゲットの家族、友人、同僚、さらには仕事や趣味にまでけちをつける。ターゲットが好意的な判断を下しているものでも、批判したり、けなしたりして、締め出そうとする」

 

・ラ・ロシュフコー(17世紀のフランスの名門貴族)の言葉
「自己愛が『この世で最もずるい奴より、もっとずるい』」

 

・「支配こそが究極の目的」とする人である

 

どうだろうか? おそろしいほど当てはまる人物が、みなさんの周りにいるのではないだろうか?

 

そして、本書では、最終章である第6章「処方箋ーかわし方、逃げ方、自分の守り方」で、もし自分がターゲットにされて悩んでいるのであれば、攻撃欲の強い人を次の3つの視点からとらえ直すといいとアドバイスしている。
1.なぜ、こんなふうにふるまうのか?
2.一体何を恐れているのか?
3.何に対して劣等感を抱いているのか?

 

私は、この2と3の「一体何を恐れているのか?」「何に対して劣等感を抱いているのか?」が攻撃する人を知る本質だと思うのである。
この部分に思い当れば、それを防御することができるように思うのである。

 

さて、私はちょうど今から2年前に、「自分の知り合いの話は正しいと言い、人の知り合いの話は違うと言う人」といううブログを書いた。
こういう人は、きっと、みなさんの身の回りにもいると思う。本当に腹立たしい人である。そして、多分、みなさんは、こんな人を見ると、「きっと、コンプレックスが強い人だな」と思うのではないだろうか?
それは、そんな人たちは、必ず、自分の知り合いを話すとき、「〇〇大学を出て、△△までやった人なんだが」とか、「多分、その人は、日本でもその分野では指折りの人なんだが」とか「能書き」をたれるからである。
「自分がその人の知り合いである、そして自分はその人と付き合っている」からその人と同じ価値観を共有していると言いたいのだろう。
だから、人の知り合いの話には、即座に「違う!」と言うのであろう。

 

そして、そんな人たちのやり方は、巧妙である。
拙著のことを持ち出しては興ざめするかもしれないが、『サラリーマンの本質』の中で、私は、その人たちを取り上げた。(第5議題 サラリーマンの悲劇ー見下しているつもりが見下している上司)
その人たちは、たいがい、飲んだ席で、「みんなで共通の話題を話そう」すことを好む。好むというよりは、そう持っていっているのである。
その話題は、社会現象、趣味、芸術、最近読んだ本などである。
そして、人にさんざん話させ、そのたびに首をかしげ、部下の知り合いの話が出ると、微妙な笑いを浮かべ、そして、絶妙の頃合いを待って、真打ち登場とばかりに自分や、自分の知り合いの意見を言う。
「それならば、最初から人の意見を聞かなければいいのに……」というのが本の内容である。
レビューをみていただくとおわかりになると思うが、この場面はけっこう読者の方から、「おれの周りにも、そんな人がいる!」と人気があったところである。機会が合ったら、お読みいただきたい。

 

そして、この本を読むと、そんな私が取り上げた人は、「攻撃的な人」であるということがよくわかるのである。
みなさんにぜひ、ご理解いただきたいのは、どなったりする上司が攻撃的というわけではないのである。
その人が心の中で持つ「意図」を見抜くことが必要なのである。
それがわからないとおだやかな立ち振る舞いの人が密かに意図をもって、みなさんに近づいていることに気づかない。
それでは、自分がターゲットになっているかどうかもわからないし、防御手段もないのである。そして、なんで悩んでいるかもわからなくなってしまうのである。
本書は、それを気づかせてくれる本である。 ぜひ! 読んでもらいたいと思っている。

 

 

 

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2015年8月16日