第20話 『下町の太陽』

『浅草のおかあさん』第20話 『下町の太陽』  から

 

 

倍賞千恵子が歌う『下町の太陽』は流行ったころ、『下町の太陽』を歌いながら現れる人がいた。
「浅草のおかあさん」の会社で働く山根さんだった。
山根さんは古くから浅草のおかあさんの会社にいた女性事務員だったが、同じ会社の若手職員に恋をしたことからこの物語は始まる。
二人の年齢差を考えると、最初はおねえさん的存在だったことは間違いないが、二人の仲は進展した。
山根さんはうれしくて仕方がなく、『下町の太陽』の曲に乗って、そこかしこに現れた。

 

 

ところが、会社に、学校を出たばかりの女性の事務員が入ってきた。誰の目にも初々しいきれいな女性に見えた。山根さんの相手の男性はこの女性にころっといってしまった。女性の方もこの男性を好きになってしまった。

 

 

「浅草のおかあさん」は、毎日、一時間も二時間も居座る山根さんの話を、ただただ黙って聞いた。同じような話を一年も聞いた。
浅草のおかあさんは相手の男性の話も聞いた。この男性の話も黙って一年聞いた。
その結果、山根さんも相手の男性も、話すことなどなくなってしまった。
話し切ったことにより、自分の心の周りを取り囲んでいた本心ではない部分がすっぽりそぎ落とされた。
山根さんの心には、相手の男性のことだけが残った。相手の男性の幸せが残った。
相手の男性も、若い自分を励まし支えてくれた山根さんへの感謝が残った
二人は、二度と話すことはなかったが、自分が本当に思っていることが相手に伝わったのか、この物語は潮が引くように幕が降りた。

 

 

『浅草のおかあさん』目次

「浅草のおかあさんの舞台を訪ねて」(画像集)

 

 

 

浅草中の人が心配した恋愛事件があった。「浅草のおかあさん」は黙って二人の話を聞いた。(写真は田原町交差点)

 

 

 

浅草に「浅草のおかあさん」と呼ばれた女性がいました

スマホで読む方法

 

 

 

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2018年1月4日