第2話 浅草の商売はおかあさんたちが支えている

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浅草の商売はおかあさんたちが支えている

 

『浅草のおかあさん』第2話 浅草の商売はおかあさんたちが支えている  から

 

 

浅草は商売の街である。だから浅草の男衆はさぞかし愛想がいいかと思う。実際はまったく逆である。きわめて愛想が悪い。
浅草を人情の街と期待した人は、そんな姿を見て、自分が嫌われたのではないかと思ってしまう。
そんな浅草の旦那衆を見て、確実に言えることがある。
旦那衆に店を任せっ放しにすれば、店は傾くということである。

 

しかし、世の中はうまくできたもので、ここに老若は入り乱れるが、浅草小町たちがいる。
浅草小町は客と主人の間を仲介する。
浅草小町の仲介はひと味違う。主人の気持ちを損ねないように、しかも自尊心を煽るような形で客の要望を伝える。

 

たとえば、食べ物屋だったら、客の中にはどうしてもある食材が苦手という人がいる。代表的なものはネギである。
これを、お客から直接主人に伝えると、「そんなことを言うなら、出ていけ」ということになる。実際、そうして店をつまみ出された客は多い。
しかし、ここに浅草小町が入ると話は変わってくる。
浅草小町は頭がいいから、「ねぇ、おまえさんなら、こんなことできるわよね」といった声のニュアンスで、ちょっと旦那の目を見て伝える。
浅草小町の存在は大きいのである。

 

 

「浅草のおかあさん」は昭和一〇年代の中頃、浅草の大きな食品会社の家に嫁いできた。
長野の篠ノ井の高等女学校を卒業し、高等科に進んで花嫁修業をしていたとき、縁談が持ち上がった。
相手は同じ長野出身だった。坂城から千曲川を渡った村上義清の居城があった村上村の生まれである。
浅草のおかあさんには、その時代の女性の常、相手を気に入ったとか、気に入らなかったという感覚もなければ、選択肢もなかった。
特に浅草のおかあさんは九人兄弟の末っ子で、父親はすでに亡くなって長兄に面倒をみてもらっているという気兼ねもあって、実家のことばかり考え嫁いできた。

 

浅草のおかあさんは、料理屋のおかみさんでもなく、商店のおかみさんでもなかった。
今風に言えば経営者夫人ということになるが、ここが浅草であることを忘れてはならない。のほほんと家事や子育てに専念することなどできなかったのである。

 

 

 

『浅草のおかあさん』目次

「浅草のおかあさんの舞台を訪ねて」(画像集)

 

 

 

 

 

 

 

浅草に「浅草のおかあさん」と呼ばれた女性がいました

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2018年1月1日